フェライト磁石、サマコバ磁石、ネオジム磁石等の永久磁石を使用した健康ネックレスの事を『磁気ネックレス』と呼び、その中でも医療機器の認証を受けたものについては「装着部位のこりおよび血行の改善」を謳う事が薬機法によって認められています。
正式名称は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」。
医薬品や医療機器、医薬部外品、化粧品以外の製品は、人若しくは動物に対して○○に効くや○○が治る等の効果効能を標榜してはいけないという法律。
僕たちが病気の治療の為に飲む薬は、○○を治す為に○○を○○し○○する事によって治療につなげるとはっきり表示されています(例.がんの分子標的薬[チロシンキナーゼ阻害薬]はEGFRチロシンキナーゼを選択的に阻害し、がん細胞の増殖能を低下させる事等により抗腫瘍効果をあらわす)。
しかし、磁気ネックレスは医療機器であるにもかかわらず、なぜ肩こりや血行を改善する効果があるのかを表示しているメーカー・ブランドは非常に少ないです。
「うちのネックレスは医療機器の認証を受けている」、「医療機器だから本物」、etc.
医療機器という事をやたらとアピールするよりも、磁気ネックレスが肩こりのどこにどう作用してどのように改善されるのかを詳細に説明してもらいたいというのが僕を含め多くの消費者の声ではないでしょうか。
ちなみに、医療機器の磁気ネックレスが医療機器ではない磁気ネックレスに比べて作用が強いという事はありません。
管理医療機器を製造・販売する場合は厚生労働省が指定した第三者機関の審査を受け、承認・認証を受ける必要がある為、しっかりしているメーカーが比較的多いという事と、効果云々ではなく、一定の基準に沿って作られている安心感が医療機器商品の特徴です。
一部巨大商品紹介サイトで「医療機器として認定されているものは、一定の効果・効能が検証されている為十分な効果が期待できる」などと書かれていますが、医療機器の磁気ネックレスだからといって高い効果を保証されたわけではないので間違えないようにしてください。
それでは、磁気による肩こりや血行改善効果のメカニズムについての見解を発表している数少ないメーカーを紹介してみましょう。
ピップ株式会社
「ピップ株式会社」は、ピップエレキバンやピップマグネループ等で有名なメーカーで、資本金3億円弱、売上高約1,900億円という大企業。
ピップマグネループEXは値段が2,000円ほどと安価かつ最大磁束密度も高めなので、コストパフォーマンスが高い商品としていろいろなサイトでおすすめされていますね。

さて、このピップ株式会社は自社内に磁気生体作用研究や分子生物学的研究を行っている総合研究所を置いています。
総合研究所長兼磁気研究室長の川上穣氏の経歴は以下のとおり。
ピップの見解
日々の生活習慣による緊張や疲労が積み重なり、筋肉が太く、硬くなった状態の事。筋肉が緊張して硬くなり、硬くなった筋肉は血管を圧迫し、血流が滞ることで老廃物が蓄積する。この老廃物が筋肉の神経を刺激してさらに筋肉が緊張し、コリの悪循環に陥る。
- 磁気を当てる事によって血行が改善し、その部位の体温も上昇して代謝も改善
- 代謝が改善する事により、老廃物が血流によって取り除かれ、こわばった筋肉や関節も柔軟性を取り戻し、痛みが改善する
1、2の流れで磁気によってコリをほぐすとピップのサイトに記載されていましたが、重要なのは1の”なぜ磁気で血行が改善するのか”という部分。
多くのサイトが説明している「血液の中に鉄の成分が磁石に引き寄せられる」という説は、磁石による磁場と血球との間で生じる力を精密に計算した結果成り立たないというのがピップの見解のようです。
その他の説としてHP上に挙げているのは「アセチルコリン説」や「NO(一酸化窒素)説」ですが、これらの仮説もまだ十分に証明されたとは言えず、メカニズムの詳細も解明されていないとの事・・・。
アセチルコリン説や一酸化窒素説は、磁気がアセチルコリンを分解するコリンエステラーゼの作用を抑制し、コリン作動性神経の末端から遊離されるアセチルコリンの量を増大させる事により、血管拡張物質であるNO(一酸化窒素)を増やして血行を改善するという考え方です。
結論としては、現時点ではっきり言える事は長期にわたって積み上げた多数の臨床データに基づいて、磁気によるコリ・血行の改善が認められているという結果のみのようです。
TDK株式会社
「TDK株式会社」は、1935年に世界ではじめて磁性材料フェライトを工業化し、以降「フェイライト素材」「磁気テープ」「積層部品」「磁気ヘッド」という世界に誇る四大イノベーションを確立した世界屈指のエレクトロニクスメーカーです(資本金300億円、売上高は連結で1兆円オーバー)。
1976年~2012年まで磁気ネックレスを「エポール」ブランドで販売していましたが、一時撤退しており、2018年から「EXNAS(エクナス)」ブランドで再参入しています。
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TDKの見解
磁気治療器の作用メカニズムは、およそ次のように説明されています。血液中の電解質成分はイオン(荷電粒子)の流れであり、電流と同じものとみなせます。ここに永久磁石の磁界を加えると、荷電粒子には電磁力が作用して(フレミングの左手の法則)、正負のイオンは互いに反対方向に移動します。この正負の荷電粒子の偏りにより、血液中に起電力が発生して電流が流れ、この電流は電解質の解離を促進し、血液中のイオンを増加させます。血液中のイオンの増加は神経系統に作用することがわかっており、その結果、肩こりや腰痛などがやわらぐと説明されています。
磁気治療器の作用メカニズムは自律神経ともからんでいるため、きわめて複雑で十分には解明されていません。しかし、磁石の磁界と血流との電磁誘導が関係していることはほぼ確かなようです。永久磁石から出るのは定常磁場ですが、アクセサリのように身につけることで、人の動きとともに磁石も動いて、実際は変動磁場として作用します。いわば永久磁石の磁界の動きも加わって、血液はほどよくマッサージされるわけです。
世界的な大企業であるTDKが発表している資料なのでWikipedia(磁気治療器)にも直流磁気治療器の仕組みと効果に関する説明例として引用されており、参考外部リンクにも記載されています。
磁気ネックレスを販売しているメーカーやブランドの中にもこの説を肩こり解消のメカニズムとして紹介しているところは多く、非常に影響力のある資料になっています。
しかし、インターネットで様々な情報を調べていると、この説に反対する意見もたくさんありました(主に学識のある個人の方)。
僕は理系の人間ではなく、どちらが正しくてどちらが間違っているのかを判断する力はないので、それぞれの意見を比較して判断してもらえればと思います(個人的には反対意見の方が理にかなっている気がします)。
反対意見を論理立てて詳しく書いている個人ブログがありましたので参考にしてみてください。
「血液成分の中には、プラスイオンとマイナスイオンに電離するものが含まれている。これが血管中を流れるということは、電流が流れることに等しい。ここに磁石によって磁場を加えると、「フレミングの左手の法則」により力が発生する。この力がイオンの流れを活発にし、血液の流れをよくすると考えられている」
という文章に関しては,一見して物理っぽい用語を並べたてて何かを科学的に説明しているように見えますが,それぞれの文章の意味が全く分からないので,論理的なつながりもなく,何の説明にもなっていません。
「考えられている」ってこんな情報ゼロの文章を確立した事実のように言うのは誤解を招きますね。
その他のメーカーでは、現在磁気ネックレスのシェアで一二を争う有名メーカーの株式会社コラントッテが、前身である株式会社アーク・クエストの時にFAQのページに見解を記載していたようです。

その内容はほぼTDKと同じでしたが、現在のホームページには載せていませんね。
⇒磁気と肩こり・・・アーク・クエストの説明文を引用している個人サイトです。
まとめ
いろいろと調べてみましたが、何十年も前から磁気の血行改善作用のメカニズムは研究されているにもかかわらず、現在でも確かな事は分からないというのが結論になるのでしょうか。
現在磁気ネックレスを製造・販売しているメーカーやブランドの中でも資金を投じて積極的に研究しているのはピップだけのような気がします・・・。
売上を増やす事ばかりに注力し、重要な事をおろそかにしている健康器具メーカーがほとんどの中、その姿勢は高く評価できますね。
血行改善作用のメカニズムがはっきり分かれば、結局は「個人差」や「プラシーボ効果」で片づけられていた磁気ネックレスの効果にグッと説得力が出ると思います。
楽天市場やヤフーショッピング等の人気ランキングで常に上位に入っているコラントッテやファイテンといった有名メーカーも、人の褌で相撲を取るのではなくピップを見習って自社で作用機序解明に向けて動いてほしいものです。

